吹き抜けの注文住宅のメリットとデメリット&改善案!【設計前・設計後編】 | 住まいのWebマガジン/TEAM NEXT MAGAZINE

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吹き抜けの注文住宅のメリットとデメリット&改善案!【設計前・設計後編】

間取りのお打合せをしていて、お客様からご要望の多いベスト3に
「リビングに開放感のある吹き抜けが欲しい!」
といったものがあります。確かに吹き抜けはとても開放感があり、間取りのアクセントとして加える時には最適な選択肢と言えます。

しかし、この吹き抜けも一歩間違えれば住環境を悪くする一面もあります。今回は、吹き抜けの家を計画する際に考えておきたいポイントをご紹介します。

目次

そもそも吹き抜けとは?

吹き抜けとは、下階(1階)の天井や上階(2階)の床を設けず、上下を連続させたスペースの事を言います。採用することで開放感があり、採光性も高い空間を作り上げることができます。
よく一戸建ての玄関やリビングやマンションのエントランスに採用されています。

吹き抜けのメリット とは?

まずは吹き抜けを作る際のメリットを見ていきましょう。

①空間が広くなり開放感がある空間になる

下階の天井・上階の床がなくなるため天井自体が高くなり、視界に遮るものがなく開放的な空間感を生むことができます。特に都市部のように敷地が狭く、あまり建築部分が取れない場合は、吹き抜けを作ると空間を広く見せることができオススメです。

②風が通りやすく通気性が良い

暖かい空気は下から上に登っていきます。吹き抜けにすることにより上階の天井がなくなるため、空気が循環しやすく風通しが良い空間になります。

③採光性がとれるので明るい室内になる

吹き抜けの上部にガラス窓を設けることで日光がたっぷり降り注ぎ、明るい家を作ることができます。日中は外からの光で十分明るさを確保することができるため、照明いらずの自然な空間を演出することが可能です。

④おしゃれな間取りになる

吹き抜けにすることで、天井から照明をつるしたりシーリングファンを取り付けたりとデザイン性が高い家にすることができます。リビングを吹き抜けにした間取りはリビング階段と相性が良く、家族が集まる空間に仕上がります。

吹き抜けのデメリットとは?

間取りに余裕があれば設計したい吹き抜けですが、こんなデメリットをお聞きしました。

①夏は暑く、冬は寒くて光熱費がばかにならない

②吹き抜けを作ると掃除が大変

③窓や照明の掃除が手間

そのうち一番の問題、「断熱性能」について詳しく説明していきます。

吹き抜け1番のデメリット[空調効率が悪く、夏は暑く冬は寒い]

家の断熱性能を十分に確保していない住宅でリビングに大きな吹き抜けを取ると、空調効率が落ちて、夏は暑くて冬は寒い家になってしまいます。

と言いますのも、吹き抜けを作る場合は、採光の確保も目的にする事が多いので、吹き抜けの上部には窓を付けるケースがほとんどです。吹き抜けは日当たりがとても良い場所に配置されるため、熱をもろに受け室内温度が高くなる傾向があります。
また、冬は暖房の温かい空気が昇っていく為、中々室内は暖まらず空調効率が落ちてしまいます。

吹き抜け問題を解決方法とは?【設計前・後】

吹き抜けのデメリットをどう防げば良いのでしょうか?

設計段階での対策と、もうすでに住んでいる状態での対策の2パターンでお話しします。当たり前なことですが、設計段階でしっかりと対策をしておけば、吹き抜けをつくっても断熱性能は全く問題ありません。

【設計前対策①】断熱性能を確保する

まずやはり一番重要なのは、吹き抜けを作る場合は住まいの断熱性能を十分に確保する事です。この断熱性や機密性については、お客様から様々なご質問があります。

Q値やC値やUA値……これは一体何ですか?どこに気を付けたら良いですか?というご質問ですが、機密性や断熱性のお話しはなかなか正解が無く、「結局住む人がどこまでこだわるか」です。

性能を上げていこうとするとその分コストがかかってしまいます。どこまでのコストをかけてどこまでの性能を求めるかですが、まず基本に考えておきたいこととして省エネルギー等級があります。吹き抜けを作る場合の必要な断熱性能は省エネルギー等級4(最高等級)です。

 ▼省エネルギー等級とは……
省エネルギー対策等級は、「住宅性能表示制度(※)」の評価分野のひとつ。住宅の断熱措置などを工夫して、冷暖房などに使うエネルギーの消費量が減らせるかを審査し、3段階から4段階の等級で評価する(等級の数値が高いほど性能が高い)。
【SUUMO住宅用語大辞典より抜粋】

断熱性能や気密性能は色々な考え方があるのですが、一番シンプルな考え方としてはこの省エネルギー等級4を基準にします。等級4とは、一次エネルギー消費量の大きな削減のための対策が講じられていることが条件です。

【設計前対策②】吹き抜け付近の窓の断熱性能を上げる

次に大事な事は、吹き抜け付近のサッシ(窓)の断熱性能を上げる事です。一般的には①アルミサッシですが、このアルミサッシの他に
②外側アルミ+室内樹脂のサッシ
③外側も室内も樹脂というサッシ

があります。もちろんアルミと樹脂には断熱性能に違いがあり、樹脂の方が高断熱です。

そして当然コストも
①アルミサッシ<②外側アルミ+室内樹脂<③外側も室内も樹脂
という順に上がっていきます。

吹き抜け近辺のサッシは最低限②外側アルミ+室内樹脂を使うべきで、できれば外側も室内も樹脂が好ましいです。ここでいう吹き抜け近辺のサッシ、とは吹き抜けの高い所にあるサッシはもちろんの事、吹き抜けの一階部分に近い場所のサッシ全てです。

あとはコストに応じて吹き抜け近辺のサッシを何カ所どのタイプ(アルミor樹脂)にするかを検討する必要があります。

【設計前対策③】太陽熱を防ぎ涼しく快適!Low-Eガラスとは?

そしてもう一つ、Low-Eガラス(ロウ・イーガラス)の採用です。
先程お話ししたアルミだ樹脂だというのはサッシのフレームの話しで、断熱においてはガラスも非常に重要になります。

Low-Eガラスは一言でいうと断熱性能が高いガラスです。吹き抜け近辺(できればリビング全て)はこのLow-Eガラスを採用する事を強くお勧めします。皆さんご存じない方も多いのですが、サッシの種類やガラスの種類は必ずしも家一棟で全て揃える必要はありません。場所に応じてサッシの種類もガラスの種類も変える事が可能です。

もちろん高性能なサッシとガラスを使うのにこした事はありませんが、コストが無限にあるわけではありません……。そこはコストとの相談ですが、少なくとも吹き抜けまわりや西日あたるサッシについては高性能なサッシとガラスを採用する事をお勧めします。
基本的にこの断熱を意識していれば、吹き抜けの夏暑い冬寒い問題は解決です。

【設計前対策④】2階部分に吹き抜けに面した広いスペースを作らない

それでもまだ気になる、もっと手を打っておきたいという方は、2階部分に吹き抜けに面した広いスペースをなるべく作らない事です。

例えば吹き抜けに2階のホールが面していればもちろんその分1階と一体になっている空間が増えますので、理論上は空調効率が落ちます。
私は断熱性能の対策のみで大丈夫だと考えておりますが、それでも心配という方は、吹き抜けを設置する場合はそこに接する2階の空間をなるべく作らないよう心がけて設計する事をお勧めします。

他にも天井にシーリングファンをつけることで空気の循環を良くしたり、全館空調システムを施工したりするのも一つの手です。

【設計後対策①】吹き付け断熱を再施工する

それでは、もう家が出来上がって実際に住んでみて、この吹き抜けの「夏暑い冬寒い」問題を抱えた場合の対策です。基本的にこの問題を抱えている場合は、断熱材やサッシの断熱対策を十分に行っていない場合だと思いますので、そこにできる限り手をつけていきます。

まず、外壁の断熱材についてですが、断熱性能の高い吹き付け断熱は入居後でも施工は不可能でありません。※手間はかかりますが……
コストに比較的余裕のある方は、断熱材を性能の高い物で再施工する事をお勧めします。

【設計後対策②】ガラスに断熱効果のあるフィルムを張る

吹き付け断熱などで断熱性能を上げた上で、サッシのガラスには断熱効果のあるフィルムを張るとさらに性能UPするでしょう。

熱は主に窓ガラスを通して部屋の中と外を行き来します。窓ガラスに断熱フィルムを施すことで、室内の温度が外気温で影響されず、室内の温度を快適に保つことができます。

この二つを行うとかなり変わると思います。そこまでコストかけられない、という方は断熱性能のあるフィルムを優先する事をお勧めします。

それでも問題が解決できない場合は、最終手段として、吹き抜けに横引きのロールブラインドをつけるのも良いと思います。ただし、せっかくの吹き抜けが春と秋限定になってしまうのが難点です。

【実例集紹介】吹き抜けに注文住宅のまとめ

いかがでしたでしょうか?
吹き抜けは狭小地でも空間を広く見せることができる人気の間取りです。しかし「実際生活するとどうなるか?」も視野に入れて、営業担当と設計士と一緒に考え施工を決めると良いと思います。

実際の施工事例が見たい!という方はこちらに掲載しております。
ぜひご覧ください。

記事:福井健太 編集:生田愛佳