今回のコロナ禍は、たくさんの業界で多大な影響を与えています。株価と並んで景気のバロメーターといわれる不動産価格は今どんな影響を受けていて、そしてアフターコロナはどのように変わっていくのか、を考えていきたいと思います。
ちなみに私は不動産業界に入って今年で約19年目……。バブルこそ経験していませんが、リーマンショック時の不動産業界大打撃も経験していますので、そのあたりもふまえてお話しします。
目次
1. 不動産の種類によって影響の受け方は違う
それでは結論から申し上げます。
影響を甚大に受ける不動産もあれば、受けない不動産もある、です。
え?それだけですか?と突っ込まれそうですが……
一言で回答するとすればこれしかありません。
それでは少し詳しくご説明していきましょう。
不動産と一口に言いましても、その種類は多岐にわたります。
一般の方が接する不動産といえば、「実需」といわれる不動産で、実際に自分が住むマンションや戸建てといった所有者本人が自己使用する目的の不動産の事です。
その他にも不動産の種類としては、「オフィスビル」や「ホテル」「商業施設」などがあります。そして最近はホテルと戸建て(もしくはマンション)の中間に「民泊」が存在します。
それではまずはこの「実需」と「投資不動産(オフィスビル等)」「民泊」に分けて考えていきます。
2. 自分が住んでいる土地の不動産価格はどうなる?
一般の方が気になるところの「実需」については、影響はほぼ無いと考えて良いと思います。
つまり値崩れする事もなければ、急激に上がる事もないかと思います。
コロナ禍は社会のあり方を大きく変えようとしていますが、コロナだろうが何だろうが人はマンションに住み、戸建てに住むからです。
もちろん、その中でも今までとは少し違った動きはあります。
例えば通勤を前提としていたので「駅徒歩何分」を重視していた方が、通勤は週に1回になったので郊外でもいいか、となったり、マンションで考えていたけど自宅にワークスペースを作りたいのでやはり戸建てにしようか、となったり……
しかし、これらの動きは住宅市場全体からみれば限定的な動きあり、住宅市場の相場を動かすモメンタムにはなりません。
不動産系のコラムを見ていると、どうもこの限定的な動きを大きくクローズアップしてあたかもそれが住宅業界に大きな影響を与えるんだ、という話が散見されます。
顕著な例として、「生産緑地の2022年問題」。さらっと説明しておきますと、1992年に生産緑地(いわば農地)を農地として置いておかないといけない期限が最低30年で、2022年にその30年が到来するので多くの生産緑地が宅地化され相場が値崩れする、というお話しです。
私からすればもはや都市伝説級の話にしか聞こえないのですが、皆さんの周りにはどれだけ生産緑地はありますか?普段我々が居住して社会活動を主に行っている「都市計画区域内の市街化区域」には生産緑地はあるものの、そこまで数は多くありません。従って2022年に多少宅地が増えようが住宅業界の相場を動かすモメンタムにはならないという事です。
もっとも都市計画区域の市街化調整区域(郊外の更に郊外)にはたくさん生産緑地はありますが、そもそもこの地域は基本的には新築住宅を建てる事ができない地域(例外はあり)ですので、生産緑地が解除されようがされまいが、住宅業界に与える影響はほとんどありません。
話をもとに戻すと、多少の違いはありながらも実需不動産(マンションや戸建て、そして住宅地の土地)については今までとあまり変わりないと思います。
3. ただし、消費マインドの低下で土地価格上昇はストップする可能性も
ただし、ここ数年続いていた土地の上昇傾向については一時期ストップする可能性はあります。それはコロナによる社会の変革、というよりも単純に景気の冷え込みによる消費マインドの低下です。
これについては、
- コロナショックはいつおさまるか
- ワクチンはいつできるのか
- 各企業の売り上げ回復はいつになるのか
- 政府の経済対策は成功するのか……といった複合要因かと思います。
それによって、いままでのように毎年若干の伸びを見せるのか、横ばいになるのか、かと思います。但し少なくとも下落はないかと思います。
ちなみに、当然ですが2極化(郊外は下げ止まり、人気地域は上昇)という中で総合的にはプラスという点は大前提となります。
4.業者内での実需の不動産価格は、実は下落するかも!?
そして大事な事を一つお話ししましょう。
リーマンショックの時もそうだったのですが、実は実需についても瞬間風速的に価格は下落します。
というと矛盾してるじゃないか!と言われそうですが、瞬間風速的下落は一般エンドユーザーまでは反映されずに、不動産業者達の中にしか影響はないのです。
この4月以降、経営状態が悪化した法人(個人事業主含む)が所有不動産を売却したり、数年前の民泊ブームにのって民泊を購入した個人投資家が物件を売却したり、という動きは徐々に広がっています。
しかしそれらを買い取るのは主に不動産会社であり、エンドユーザーではない事がほとんどです。理由は様々ありますが、買い取りを急ぐ案件だったり、規模が大きかったり、エンドユーザーが手を出しにくい案件だったりするのですが、多くは(ほとんど全て?) 不動産業者が買い取ります。
そして不動産会社は当然ですが、エンドユーザーに向けて物件を再販売する訳ですが、まだ実需不動産相場が値崩れしていない中で、不動産業者は割安の価格で売り出すでしょうか。
答えはもちろんNOで、適正相場で売り出します。
これが瞬間風速的に価格は下がるが、一般エンドユーザーには反映されない、という意味です。リーマンショックの時にもほぼ同じような事が起こりましたが、この夏以降秋頃にかけてはこの流れは続くと思います。とくに感染者が今後どんどん拡大して、2回目の非常事態宣言が出ようものなら、更に流れは加速すると思います。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回のコロナ禍において、実需自体の土地価格は多少の違いはありながらも、値崩れしたり価格高騰したりことはないと思われます。
ただそれはエンドユーザーに見える範囲であって、不動産業者内での価格下落はある可能性があります。
今回は「実需」について詳しくお話ししました。次回は「Part2.コロナ禍で不動産価格はどうなっていく? 不動産業も営む代表が解説!【民泊・オフィスビル編】」にて、商業施設や民泊の不動産価格の推移予想についてお話しします。
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記事:福井健太 編集:生田愛佳